今年も面白いバイリンガルの本の翻訳を担当させてもらった。去年の太陽系の本に続いて、またもグラフィックデザイナの松田行正さんの本なんだけど、今回は松田さんの幼い娘のサラちゃんが「主人公」になっている絵本だ。しかし、文書のほうはなんと美術・技術・デザイン(など)における速度の概念の思想史のようなものなので、はたして子供のための絵本なんだろうか。むしろ、いわば「オヤバカ」の本なのかもしれないが、それはともかくとして、面白くてかわいい!
松田行正(著)速度びより (ラジカル・ヒストリー・ツアー) English translation: Jan Fornell
This year too I had the pleasure of translating another bilingual book for the graphic designer Matsuda Yukimasa. Following last years model of the solar system, this one is a picture book featuring Matsuda-san's young daughter Sarah. The text, however, is a condensed history of the notion of speed in art, design and technology, so perhaps it's not so much a book for small children really. It is very much a book, though, for anyone who is interested in graphic design or who likes cute and fun books in general.
Friday, December 31, 2010
Tuesday, December 28, 2010
おん祭
去年、奈良の春日大社の「おん祭」についての記事を翻訳したことがあった。それで興味がわいてきて、自分の目で見たいと思った。去年はタイミングが合わなかったが、今年こそ行ってきた。そのお祭りは平安時代から始まって、870年以上途切れなく続けて行われているが、 普通のヤキソバとお酒のお祭りと全く関係ない。逆に、舞楽や雅楽など、平安時代の文化そのままで、相当しぶいわけだ。そして後でわかったが、相当寒い!
お祭りのいろんな儀式が15日から始まるが、メインは12月17日の24時間なので、それに合わせて行った。まずは午前0時行われる「遷幸の儀(せんこうのぎ)」。それは神霊を若宮本殿からお祭りのために作られた「お旅所」に運ぶ神秘的な儀式だが、神秘であるからこそ闇の中で行われている。写真、ビデオの録画や懐中電灯の使用は禁止で、ケータイなんかはとんでもない。「神に失礼」にあたる。しかし、現代人はバカである。いや、昔の人に比べて本当にバカなのかどうかは不明だとしても、昔の人に比べれば今のバカは迷惑をかけることができる、そして迷惑になる道具を持っていることは間違いない。実は、この夜は満月の数日前なのに、月の光は眩しいぐらい明るかった。奈良の公園の奥の「闇」といっても、月光による影さえくっきり見えた。少し慣れれば、全然「暗い」感じはしなかった。本まで読める訳じゃなかったが、(アナログの)時計の時間をみるのは問題なかった。ところが、ぎりぎりまでケータイを手放せない人は数え切れないほどいた(神秘の儀式を待ちながらMIXIをやるばあいじゃないでしょ?)し、そしてなんといってもぎりぎりまでフラッシュを使って記念写真を撮ったりする、絶対許せない大バカヤローもたくさんいた。もちろん、そのフラッシュが近くに立つ人(僕とか)の眼に入るとせっかく暗さになれた視力がパッになってしまう。えらい迷惑だ。
23時ごろホテルから出て、参道の春日大社のかなり近いところに立って待っていたが、24時になると、神社のほうの光が消えることが分かった。いよいよ始まるんだね。そして、しばらくして神霊を運ぶ行列が通った。宮司や巫女がいる、ひちりきを吹く人がいる、そして神霊が入っている「なにか」を枝で囲む人がいる。見た目も不思議だったが、一番すごかったのは音のほう!神社のホームページには「「ヲー、ヲーの声」と説明されているが、それとひちりきなどの音が混ざって、千年前の響きなのか、宇宙の声なのか、とにかく聞いたことのない、本当に毛が立つほど神秘的な音だった。あれを聞くためだけでもこのお祭りに参加する価値がある。また来年聞きにいきたいなと思う。(ちなみに、撮影は厳禁だが、録音はどうだろう。ちょっとネットで探したが、そんな情報が見つからない。)
行列の最後尾に合流して、お旅所まで。そこに神霊が入ったら、火がついて、いろんな祈りや儀式、そして神楽が行われた。時間はもう夜の1時半を回ったし、気温も零度に近かったが、かなりたくさんの人がいた。でもそのうち寒さに負けて、ホテルの温泉に戻った。
次の日(というか、同じ17日の昼間)にはまずお渡り式というパレードがあった。後の「お旅所際」に参加するパフォーマーなどが平安時代の衣装で通るが、役割不明な道具や「帽子」などが多い。
たとえばこの田楽の団体の「ミニフロート」...
...があとで、なんとかぶり物になってしまう!
もっとも、お旅所での演技はすべて神様のためなので、神様に向かって行われている。それは同時に一般の観客に背を向いているわけだから、なにをやっているのかがよく見えないことが多い。たとえば、この田楽は能のような短いものを演奏したらしいが、こんな距離(15メーター?)からでも全然見れなかったし、なにも聞こえなかった。
お旅所は毎年お祭りのために建てられるが、屋根は神社の大昔の形だそうだ。
午後の神楽。左には巨大な火炎太鼓の片方が聳え立つ。(右にも違う1個がある。)
子供の演奏者の着替えには大人たちが手伝う。暗くなってからは同じ舞の大人版もあったが、大人たちは自分で着替えることができた。
どんどん暗くなって、寒くなった。この日は今年のそこまでの一番の冷え込みで、ひょっとして0度を下回ったかもしれない(猿沢池の表面が凍っていたようにみえた)。上の「細男」(せいのう)を見て、ちょっと休憩をして、温かいコーヒーを飲みに行ってきた。
演奏は順番に何時間も続いていた。これは不思議な琴の引き方。二人が琴の両側を持ちながら、もう一人が引いている。残りの人は歌。
舞楽は衣装がすごい迫力だが、舞そのものはとてもゆっくりしていて、雅楽もかなり単調だ。そのうちあの「仮面に似合う」大胆な動きやステップがあるんじゃないかと期待しながら見ていたが、いくら待ってもそういうような派手な動きは結局でてこない。最後まで非常に遅くて、意味がありそうだが意味がわからない細かい動きやポーズだけだ。それがつまらないというわけではない。むしろ、不思議な魅力があるような気がする。なんといっても魔法なんだから!ただ、厳しい寒さの中に何時間も立って見るのにやっぱり限界がある。別の季節ならもっと見たかったが。
昼間は人が入りきれないほど込んでいたのに、夜になると観客がどんどん減っていって、9時頃は招待席の客産を別として、僕たちのような立ち見の一般の観客は数十人しかいなかった。上の青い衣装の「キトク」というものを途中まで見て、夜10時ごろは僕たちももうギブアップ。あと2つの舞と神霊を返す儀式が残っていたが、手足の感覚はとっくに前からなくなっていて、歯もガタガタし始めていた。お旅所の近くには屋台とかそういうようなものがないから、結局街の中のまだ開いている居酒屋にを必死に探して、熱燗を頼むしかなかった。
お祭りのいろんな儀式が15日から始まるが、メインは12月17日の24時間なので、それに合わせて行った。まずは午前0時行われる「遷幸の儀(せんこうのぎ)」。それは神霊を若宮本殿からお祭りのために作られた「お旅所」に運ぶ神秘的な儀式だが、神秘であるからこそ闇の中で行われている。写真、ビデオの録画や懐中電灯の使用は禁止で、ケータイなんかはとんでもない。「神に失礼」にあたる。しかし、現代人はバカである。いや、昔の人に比べて本当にバカなのかどうかは不明だとしても、昔の人に比べれば今のバカは迷惑をかけることができる、そして迷惑になる道具を持っていることは間違いない。実は、この夜は満月の数日前なのに、月の光は眩しいぐらい明るかった。奈良の公園の奥の「闇」といっても、月光による影さえくっきり見えた。少し慣れれば、全然「暗い」感じはしなかった。本まで読める訳じゃなかったが、(アナログの)時計の時間をみるのは問題なかった。ところが、ぎりぎりまでケータイを手放せない人は数え切れないほどいた(神秘の儀式を待ちながらMIXIをやるばあいじゃないでしょ?)し、そしてなんといってもぎりぎりまでフラッシュを使って記念写真を撮ったりする、絶対許せない大バカヤローもたくさんいた。もちろん、そのフラッシュが近くに立つ人(僕とか)の眼に入るとせっかく暗さになれた視力がパッになってしまう。えらい迷惑だ。
23時ごろホテルから出て、参道の春日大社のかなり近いところに立って待っていたが、24時になると、神社のほうの光が消えることが分かった。いよいよ始まるんだね。そして、しばらくして神霊を運ぶ行列が通った。宮司や巫女がいる、ひちりきを吹く人がいる、そして神霊が入っている「なにか」を枝で囲む人がいる。見た目も不思議だったが、一番すごかったのは音のほう!神社のホームページには「「ヲー、ヲーの声」と説明されているが、それとひちりきなどの音が混ざって、千年前の響きなのか、宇宙の声なのか、とにかく聞いたことのない、本当に毛が立つほど神秘的な音だった。あれを聞くためだけでもこのお祭りに参加する価値がある。また来年聞きにいきたいなと思う。(ちなみに、撮影は厳禁だが、録音はどうだろう。ちょっとネットで探したが、そんな情報が見つからない。)
行列の最後尾に合流して、お旅所まで。そこに神霊が入ったら、火がついて、いろんな祈りや儀式、そして神楽が行われた。時間はもう夜の1時半を回ったし、気温も零度に近かったが、かなりたくさんの人がいた。でもそのうち寒さに負けて、ホテルの温泉に戻った。
次の日(というか、同じ17日の昼間)にはまずお渡り式というパレードがあった。後の「お旅所際」に参加するパフォーマーなどが平安時代の衣装で通るが、役割不明な道具や「帽子」などが多い。
たとえばこの田楽の団体の「ミニフロート」...
...があとで、なんとかぶり物になってしまう!
Carmen Miranda, you got nothin' on me!
でもそれをかぶっても、別になにかを「やった」気配は全くなくて、高い下駄の上にそこに立っていただけのようだ。もっとも、お旅所での演技はすべて神様のためなので、神様に向かって行われている。それは同時に一般の観客に背を向いているわけだから、なにをやっているのかがよく見えないことが多い。たとえば、この田楽は能のような短いものを演奏したらしいが、こんな距離(15メーター?)からでも全然見れなかったし、なにも聞こえなかった。
お旅所は毎年お祭りのために建てられるが、屋根は神社の大昔の形だそうだ。
午後の神楽。左には巨大な火炎太鼓の片方が聳え立つ。(右にも違う1個がある。)
子供の演奏者の着替えには大人たちが手伝う。暗くなってからは同じ舞の大人版もあったが、大人たちは自分で着替えることができた。
どんどん暗くなって、寒くなった。この日は今年のそこまでの一番の冷え込みで、ひょっとして0度を下回ったかもしれない(猿沢池の表面が凍っていたようにみえた)。上の「細男」(せいのう)を見て、ちょっと休憩をして、温かいコーヒーを飲みに行ってきた。
演奏は順番に何時間も続いていた。これは不思議な琴の引き方。二人が琴の両側を持ちながら、もう一人が引いている。残りの人は歌。
舞楽は衣装がすごい迫力だが、舞そのものはとてもゆっくりしていて、雅楽もかなり単調だ。そのうちあの「仮面に似合う」大胆な動きやステップがあるんじゃないかと期待しながら見ていたが、いくら待ってもそういうような派手な動きは結局でてこない。最後まで非常に遅くて、意味がありそうだが意味がわからない細かい動きやポーズだけだ。それがつまらないというわけではない。むしろ、不思議な魅力があるような気がする。なんといっても魔法なんだから!ただ、厳しい寒さの中に何時間も立って見るのにやっぱり限界がある。別の季節ならもっと見たかったが。
昼間は人が入りきれないほど込んでいたのに、夜になると観客がどんどん減っていって、9時頃は招待席の客産を別として、僕たちのような立ち見の一般の観客は数十人しかいなかった。上の青い衣装の「キトク」というものを途中まで見て、夜10時ごろは僕たちももうギブアップ。あと2つの舞と神霊を返す儀式が残っていたが、手足の感覚はとっくに前からなくなっていて、歯もガタガタし始めていた。お旅所の近くには屋台とかそういうようなものがないから、結局街の中のまだ開いている居酒屋にを必死に探して、熱燗を頼むしかなかった。
*
ああ、奈良といえばもちろん鹿。自分の糞の後片付けに手伝う鹿もいるみたい。Monday, December 13, 2010
再びHanoi
数か月前、急にまた Bun chaや Cha ca が食べたくなった。しかし、それを食べさせてくれる日本でのヴェトナム料理のお店が知らないし、9月の代々木公園のヴェトナム祭りの屋台で食べた"Bun cha"の偽物があまりうまくなかったから、結局また「グルメのハノイ」へ行くしかない、と決心した。今回は切符が以外ととりにくかったが、11月末にやっと行ってきた。
出発の前に天気情報を見て、「毎日27度前後で、最低気温19度」とのことだったから、ほとんど半そで・短パンの服ばかりを持って行ったが、そんな占いはもちろん見事に外れてしまった。ハノイに着いたときはどんよりと曇っていたし、現地の人たちはみんなセーターと上着を着ていたのに、それでも寒がっていた。 そんな天気がずっと続いていたので、短パンどころか、日本の空港への往復のために持っていた上着は大活躍になった。しょうがないね。
ちなみに、去年大けがした空港のモニターは今年フラットスクリーンに変わったから、今回は無事にパスポートコントロールを通ることができた。よかった。
ハノイの屋台には例のBun cha と Cha ca 以外にもおいしいものがいっぱいある。
たとえば Banh ghoi という肉入りの揚げパイ。
この不気味な黒いものはさすがに試さなかった。最初は変なプラスチック製のおもちゃとか何かだと思ったが、実はビール缶に植えた(?)鳥の足のようだ。食べ物として売っていたのは間違いないが、でもなぜあんな怖い形になっているのか、なぜ黒いのか、謎が多い。
ハノイ人は(他のヴェトナム人に比べれば)そんなに犬肉を食べないらしいが、「犬肉」のヴェトナム語(thịt chó)がわかってから、いろんなところで見てしまう。普通はこれほど派手でないが...
出発の前に天気情報を見て、「毎日27度前後で、最低気温19度」とのことだったから、ほとんど半そで・短パンの服ばかりを持って行ったが、そんな占いはもちろん見事に外れてしまった。ハノイに着いたときはどんよりと曇っていたし、現地の人たちはみんなセーターと上着を着ていたのに、それでも寒がっていた。 そんな天気がずっと続いていたので、短パンどころか、日本の空港への往復のために持っていた上着は大活躍になった。しょうがないね。
ちなみに、去年大けがした空港のモニターは今年フラットスクリーンに変わったから、今回は無事にパスポートコントロールを通ることができた。よかった。
Street Food
ハノイの屋台には例のBun cha と Cha ca 以外にもおいしいものがいっぱいある。
たとえば Banh ghoi という肉入りの揚げパイ。
Banh ghoi: very tasty deep-fried meat pies
朝から売っている焼きたてのフランスパンも捨てがたい。さらに朝食として目玉焼きをその場で焼いて入れてくれた。
Hai Phong morning bread, stuffed with a freshly fried egg
道路際で食べるのだけじゃなくて、料理をするのも文字通り道路際だ。オートバイの群れが30センチぐらいの距離で通ることを見ると衛生面はどうかと思うときもあるが、この炭火+排気ガス焼きのブンチャ用の豚肉はやっぱりおいしかった。
Charcoal and bike exhaust fume grilled pork
Washing tomatoes
冬の名物か、体が温まるというカタツムリのスープはあっちこっちで見たから、試してみた。やっぱりこれもなかなかおいしい。エスカルゴ―のニンニク風味とは関係ない、海の味だった。ハーブ、トマト、ビーフン、厚揚げなども入っていて、意外とさわやかな味。英語の看板やメニューがあるところには snail (=カタツムリ)にはなっているが、実はなにかの巻貝なんじゃないかと思う。つまる陸上のカタツムリじゃなくて、小さいサザエのようなものとか。
Snail soup?
Actually, they are probably sea snails, but quite delicious
Snail soup shop
この不気味な黒いものはさすがに試さなかった。最初は変なプラスチック製のおもちゃとか何かだと思ったが、実はビール缶に植えた(?)鳥の足のようだ。食べ物として売っていたのは間違いないが、でもなぜあんな怖い形になっているのか、なぜ黒いのか、謎が多い。
Alien chicken feet
ハノイ人は(他のヴェトナム人に比べれば)そんなに犬肉を食べないらしいが、「犬肉」のヴェトナム語(thịt chó)がわかってから、いろんなところで見てしまう。普通はこれほど派手でないが...
Hanoi hot dog
Ninh Binh cold dog
今回は犬こそ食べなかったが、もっとすごいものに挑戦した。(以下続く。)
別の公園で、レーニンはサッカーの審判にも努めている。
独特のクリスマス飾りもある。
ハロン湾のツアーへ行くとき、Cat Ba 島の1泊のパッケージが多いが、僕が去年行ったとき船の2泊のオプションを選んだから Cat Ba へは行かなかった。というわけで、今年はそこへ行ってみた。今回はツアーじゃなくて、自分でバスやボート(そのコンビネーションの切符は4時間かかる片道が約700円)で行って、あまりきれいじゃなかったけど安いホテル(1泊500円)に泊って、次の日はフェリー(200円)でハイフォンへ行って、そこにももう少しいいホテルに1泊(1000円)して、そして電車(200円)でハノイに戻った。ヴェトナムに旅行するのはまだまだ信じられないほど安い。
結論としては Cat Ba はどうでもよかったが、それは行ってみないと分からないよね。海に入るつもりで水着とかを持っていたが、とてもそんな天気じゃなかった。もう完全にオフシーズンになっていたからそこにも人が少なくて、海に入れなければすることもあまりなかったから1泊でいい。(一応国立公園のトレッキングがポピュラーだが、話によるとかなりきついし、そういう目的の靴や服も全然持っていなかった無理だった。)
Cat Ba 行きの最初の2時間のバスには観光客のためか、運転手の趣味なのかわからないが、なぜかABBA などの一昔の音楽のDVDがずっと流れていた。音楽そのものはともかくとして、ABBAのファッションは当時でも趣味がよかったわけではないけど、今見ると呆気にとられるほどだ。そしてABBAの後はさらに趣味が悪いモダン・トーキングという80年代ドイツ人の二人組のDVDに変わった。不思議の国の旅だ。
ハイフォンで別のバスに乗り換えて、そしてこのスピードボートに乗った。Cat Ba島でさらにもう一つのバス。やっぱり4時間かかってしまった。
泊っていた部屋はたいしたことなかったが、バルコニーからはこんなビューだった。
ハイフォンはほとんどガイドブックに載っていなかったり、数行で片付けられたりしているが、数百万人も住む大都会だから、「きっとなにかがあるはずだ」と思って行ってみた。そして実は不思議なところだ。普通の意味での観光スポットなんか全然ないし、英語はほとんど通じないけど、そのおかげ(?)で一晩歩き回っているあいだほかの外国人は一人も見かけなかった。つまり、観光客が多いハノイよりもここは本当のヴェトナムなのかもしれない。カフェが多くて、ある道には10件も並んだりしている。しかも、みんな満席だった。カフェの文化の町なのか。
ヴェトナムコーヒーは世界で一番おいしいことはいうまでもないが、そのなかでも僕が人生で飲んだ一番うまいコーヒーはハイフォンの朝、Carmenというちょっと高級なカフェで飲んだ1杯なんじゃないかと思う。残念ながら寝ぼけていたから写真を撮るのを忘れていたが、ヴェトナム式のコーヒーはドリップするのに10分もかかる場合があるが、当然そのあいだ冷めてしまう。ところが、Carmen ではカップがお湯入りの小さい椀に入っていて、暑いままだった。そして濃くて、ダークチョコレートのとろりとした感じで、最高だった。
(ちなみに、いいコーヒー豆を買ってきたが、ここで作るとヴェトナムの味をまだうまく再現できない。というより、僕が作ったコーヒーは足元にも及ばない。やっぱり豆だけじゃなくて、淹れるコツも一つや二つありそうだ。)
ハイフォンからは電車でハノイに戻った(2時間、200円)。電車の中ではじめてほかの外国人を見かけたが、ヴェトナム人たちはみんな車内に放送された笑い番組やケータイに夢中だった。
それぞれのボートには客さんが二人しか乗れないから、一人だった僕はマレーシアから来た女性たちのグループの一番の美人と一緒になった。28歳の小学校の数学の先生だって。
帰りのバスから見たスモッグの夕陽の中の岩と教会と工場の塔。
そして決まりのトイレのサイン
さてさて、最後にはなるが、ハイフォンへ行く理由はもう一つあった。 それは、そこになんと猫料理のレストランがあるといううわさを聞いたからだ。
とてもおかしい話だが、実は昔々、僕が小さいころ嫌で食べたくなかったものがあったとき、お茶目のおじいさんが「それが炒めた猫肉だよ!」と説得さえしてきれれば、僕はなんでも楽しく食べてしまった。ほかの肉の種類はもちろん、大嫌いなニシンさえ「ネコ」になりすまして入ってしまった。
でもハイフォンではそういった猫になりすましたものじゃなくて本物の猫料理がある。着いた午後にぶらぶらしたときそれっぽいところを全然見なかったので、ホテルのフロントに聞いた。犬猫のレストランはやっぱり限られていて、中心部にはないが、そういうようなお店がならんでいる道を教えてもらった。多少変な目で見られたのも無理でもない。そもそも外国人があまりいない町に猫料理を探す人はまれだろうね。
そんなわけで中心部から郊外のほうへ向かって歩き始めた。地図にはそんなに遠いようには見えなかったが、30分歩いても全然見つからない。暗くなっていたし、車が多いハイウェイのような道路で、別に歩いて楽しいところじゃなかったからもうそろそろギブアップしようと思ったそのとき、まずは犬料理屋さんを発見した。とりあえず正しい方向に向かっている証拠だ。その次は犬も猫もあるという看板のお店(というか暗い屋台)だったが、「今日は猫がない。でもこの次のところにはきっとあるよ!」といわれた。
そしてさらに一キロを歩いたら、とんでもない看板を見つけた。
そう、ペットショップじゃなくて、本当に猫料理の専門店だ。本当に首輪付きのかわいい猫を食べさせるのか、と思ったが、ヴェトナムの猫料理屋さんの看板はこんな調子らしい。(ちなみに、"meo" はもちろん「猫」のことで、"lau" は「鍋」の意味だそうだ。)
罪の意識は強かったが、ここまで来たからとりあえず深呼吸して入ってみた。
英語はもちろん全然通じないし、メニューなんかなかったが、ほかの人がなにを食べているのかを見て厨房(というか、部屋の片隅の屏風の裏)を除いた。そこでチェフが一匹の猫を解体しているところだったが、幸い頭や毛皮はもうなくなっていた。すでに「肉」の塊だけだった。そのなかでモモ肉っぽい部分を指して、グリルしてもらえないか、のように手話で伝えて、テーブルに戻って、待ちながらビールを飲んでいた。
お店には少なくてもそのとき男性客しかいなかった。女性が猫を食べないのか、あるいは食べてはいけないのかよくわからないが、たまたまそういう夜だっただけかもしれない。ソテーした猫肉を食べる人もいれば、猫スープを飲む人もいた。鍋こそは見なかったが、時間はまだ早かったのかな。
しばらくして、焼いた猫肉とその付き合わせの具が運ばれてきた。ヴェトナム料理には必ず出るハーブや葉っぱは当たり前だが、ゴマせんべいやスターフルーツにはちょっと驚いた。さらに唐辛子が入ったソースもでたが、これは案外パルメサンっぽい味で、うまい。
Lenin
旧市街にいると、ヴェトナムは一応(まだ)共産主義の国だちうこことを完全に忘れてしまう。空港のパスポートチェックや税関もすいすい楽々で、余計な書類などの手続きは一切なし、数秒で通過してしまう(どこかのいわゆる「自由の国」とえらく違うね。)でも旧市街以外のハノイの部分をぶらぶらするとレーニンの名前が未だにあっちこっちに登場する。たとえばレーニン公園という大きな公園がある。広い池があるし、キッチュなコンクリートのモニュメントもあるが、相変わらずの曇りの天気のせいか、僕が行ったときその公園はガラガラで、さびれた遊園地のような雰囲気だった。
しかし、そんな公園はなぜか結婚式や結婚記念写真の名スポットになっているらしい。せっかくなのにあんな天気とスモッグで霞めている風景はちょっともっといないような気がするけど。
Weddings in the smog at Lenin Park
別の公園で、レーニンはサッカーの審判にも努めている。
Lenin as football referee
Hanoi Christmas decorations
Cat Ba and Hai Phong
ハロン湾のツアーへ行くとき、Cat Ba 島の1泊のパッケージが多いが、僕が去年行ったとき船の2泊のオプションを選んだから Cat Ba へは行かなかった。というわけで、今年はそこへ行ってみた。今回はツアーじゃなくて、自分でバスやボート(そのコンビネーションの切符は4時間かかる片道が約700円)で行って、あまりきれいじゃなかったけど安いホテル(1泊500円)に泊って、次の日はフェリー(200円)でハイフォンへ行って、そこにももう少しいいホテルに1泊(1000円)して、そして電車(200円)でハノイに戻った。ヴェトナムに旅行するのはまだまだ信じられないほど安い。
結論としては Cat Ba はどうでもよかったが、それは行ってみないと分からないよね。海に入るつもりで水着とかを持っていたが、とてもそんな天気じゃなかった。もう完全にオフシーズンになっていたからそこにも人が少なくて、海に入れなければすることもあまりなかったから1泊でいい。(一応国立公園のトレッキングがポピュラーだが、話によるとかなりきついし、そういう目的の靴や服も全然持っていなかった無理だった。)
Cat Ba 行きの最初の2時間のバスには観光客のためか、運転手の趣味なのかわからないが、なぜかABBA などの一昔の音楽のDVDがずっと流れていた。音楽そのものはともかくとして、ABBAのファッションは当時でも趣味がよかったわけではないけど、今見ると呆気にとられるほどだ。そしてABBAの後はさらに趣味が悪いモダン・トーキングという80年代ドイツ人の二人組のDVDに変わった。不思議の国の旅だ。
ハイフォンで別のバスに乗り換えて、そしてこのスピードボートに乗った。Cat Ba島でさらにもう一つのバス。やっぱり4時間かかってしまった。
泊っていた部屋はたいしたことなかったが、バルコニーからはこんなビューだった。
View from the balcony of my $6 room at Cat Ba
Cat Ba town waterfront
ハイフォンはほとんどガイドブックに載っていなかったり、数行で片付けられたりしているが、数百万人も住む大都会だから、「きっとなにかがあるはずだ」と思って行ってみた。そして実は不思議なところだ。普通の意味での観光スポットなんか全然ないし、英語はほとんど通じないけど、そのおかげ(?)で一晩歩き回っているあいだほかの外国人は一人も見かけなかった。つまり、観光客が多いハノイよりもここは本当のヴェトナムなのかもしれない。カフェが多くて、ある道には10件も並んだりしている。しかも、みんな満席だった。カフェの文化の町なのか。
ヴェトナムコーヒーは世界で一番おいしいことはいうまでもないが、そのなかでも僕が人生で飲んだ一番うまいコーヒーはハイフォンの朝、Carmenというちょっと高級なカフェで飲んだ1杯なんじゃないかと思う。残念ながら寝ぼけていたから写真を撮るのを忘れていたが、ヴェトナム式のコーヒーはドリップするのに10分もかかる場合があるが、当然そのあいだ冷めてしまう。ところが、Carmen ではカップがお湯入りの小さい椀に入っていて、暑いままだった。そして濃くて、ダークチョコレートのとろりとした感じで、最高だった。
(ちなみに、いいコーヒー豆を買ってきたが、ここで作るとヴェトナムの味をまだうまく再現できない。というより、僕が作ったコーヒーは足元にも及ばない。やっぱり豆だけじゃなくて、淹れるコツも一つや二つありそうだ。)
Haiphong by night
お金をねだって、カラオケ機を押しながら回る人は何人かいた。朝の8時ても。
Ambulating karaoke - at 8 o'clock in the morning
ハイフォンからは電車でハノイに戻った(2時間、200円)。電車の中ではじめてほかの外国人を見かけたが、ヴェトナム人たちはみんな車内に放送された笑い番組やケータイに夢中だった。
Very cute ticket girls at Hai Phong station
The single track runs close by the houses in Hanoi
Tam Coc
今回のもう一つの小旅は「陸のハロン湾」といわれる Tam Coc というところへの日帰りツアーだった。これはホテルで予約したからちょっと高め(全部込みで29ドル)だが、いいや。「観光客が多すぎる」という文句はネットで見たけど、オフシーズンだったからか、あまり問題に感じなかった。とにかくとてもきれいなところだ。またハノイのスモッグから離れると天気も少し良くなってきてくれた。
Tam Coc は「三つの洞窟」の意味だそうで、川が通る三つの低いトンネルのことなのだ。(去年のラオスで見た洞窟にはちょっと比べモノにならないけど。)まずはちょっとサイクリングしてから、ランチを食べて、そしてボートで川に1時間半も乗るというパターンだ。ランチにはその地方の名物であるヤギの肉が約束されたが、結局焼き鳥の大きさの串が一本しかでなかった。(あとは普通の野菜とか豚肉とか。)
それぞれのボートには客さんが二人しか乗れないから、一人だった僕はマレーシアから来た女性たちのグループの一番の美人と一緒になった。28歳の小学校の数学の先生だって。
Pretty mathematics teacher from Penang
ボートを漕ぐ人はときどき手じゃなくて足で漕いだりしている。
そのやり方でかなりのスピードを出す人もいる。
そして決まりのトイレのサイン
ヤキネコ
とてもおかしい話だが、実は昔々、僕が小さいころ嫌で食べたくなかったものがあったとき、お茶目のおじいさんが「それが炒めた猫肉だよ!」と説得さえしてきれれば、僕はなんでも楽しく食べてしまった。ほかの肉の種類はもちろん、大嫌いなニシンさえ「ネコ」になりすまして入ってしまった。
でもハイフォンではそういった猫になりすましたものじゃなくて本物の猫料理がある。着いた午後にぶらぶらしたときそれっぽいところを全然見なかったので、ホテルのフロントに聞いた。犬猫のレストランはやっぱり限られていて、中心部にはないが、そういうようなお店がならんでいる道を教えてもらった。多少変な目で見られたのも無理でもない。そもそも外国人があまりいない町に猫料理を探す人はまれだろうね。
そんなわけで中心部から郊外のほうへ向かって歩き始めた。地図にはそんなに遠いようには見えなかったが、30分歩いても全然見つからない。暗くなっていたし、車が多いハイウェイのような道路で、別に歩いて楽しいところじゃなかったからもうそろそろギブアップしようと思ったそのとき、まずは犬料理屋さんを発見した。とりあえず正しい方向に向かっている証拠だ。その次は犬も猫もあるという看板のお店(というか暗い屋台)だったが、「今日は猫がない。でもこの次のところにはきっとあるよ!」といわれた。
そしてさらに一キロを歩いたら、とんでもない看板を見つけた。
そう、ペットショップじゃなくて、本当に猫料理の専門店だ。本当に首輪付きのかわいい猫を食べさせるのか、と思ったが、ヴェトナムの猫料理屋さんの看板はこんな調子らしい。(ちなみに、"meo" はもちろん「猫」のことで、"lau" は「鍋」の意味だそうだ。)
罪の意識は強かったが、ここまで来たからとりあえず深呼吸して入ってみた。
英語はもちろん全然通じないし、メニューなんかなかったが、ほかの人がなにを食べているのかを見て厨房(というか、部屋の片隅の屏風の裏)を除いた。そこでチェフが一匹の猫を解体しているところだったが、幸い頭や毛皮はもうなくなっていた。すでに「肉」の塊だけだった。そのなかでモモ肉っぽい部分を指して、グリルしてもらえないか、のように手話で伝えて、テーブルに戻って、待ちながらビールを飲んでいた。
お店には少なくてもそのとき男性客しかいなかった。女性が猫を食べないのか、あるいは食べてはいけないのかよくわからないが、たまたまそういう夜だっただけかもしれない。ソテーした猫肉を食べる人もいれば、猫スープを飲む人もいた。鍋こそは見なかったが、時間はまだ早かったのかな。
しばらくして、焼いた猫肉とその付き合わせの具が運ばれてきた。ヴェトナム料理には必ず出るハーブや葉っぱは当たり前だが、ゴマせんべいやスターフルーツにはちょっと驚いた。さらに唐辛子が入ったソースもでたが、これは案外パルメサンっぽい味で、うまい。
肉を葉っぱとスターフルーツにはさんで、ソースにディップする。 そしてなんと、すごくおいしかった!猫肉の本来の味なのか、香草(レモングラス?)の味付けのおかげなのか、食べたことのないさわやかな味だ。くせはないが、鶏肉のようなつまらない味でもなかった。本当にびっくりするほどおいしくて、楽々全部をたいらげた。途中で若い店長さんが珍しい客の僕のテーブルにやってきて、不透明で緑色の怪しいお酒を注いでくれたが、自分でも飲んでいたから大丈夫だろうと思って乾杯した。「おなかにいい」とのこと。また「スタミナにに犬肉もいいけど、猫が一番だ」って。
猫肉は僕にとって犬よりタブーだった。猿も食べたこことあるから、あと残っているのはもはや人肉だけなのか。
日本に戻ったとき、おボツ様はどう反応するのかちょっと心配していたけど、いつものようにべたついているから、せめて変なにおい(つまり「共食いの臭い」)はしないみたい。それはよかった。
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