お祭りのいろんな儀式が15日から始まるが、メインは12月17日の24時間なので、それに合わせて行った。まずは午前0時行われる「遷幸の儀(せんこうのぎ)」。それは神霊を若宮本殿からお祭りのために作られた「お旅所」に運ぶ神秘的な儀式だが、神秘であるからこそ闇の中で行われている。写真、ビデオの録画や懐中電灯の使用は禁止で、ケータイなんかはとんでもない。「神に失礼」にあたる。しかし、現代人はバカである。いや、昔の人に比べて本当にバカなのかどうかは不明だとしても、昔の人に比べれば今のバカは迷惑をかけることができる、そして迷惑になる道具を持っていることは間違いない。実は、この夜は満月の数日前なのに、月の光は眩しいぐらい明るかった。奈良の公園の奥の「闇」といっても、月光による影さえくっきり見えた。少し慣れれば、全然「暗い」感じはしなかった。本まで読める訳じゃなかったが、(アナログの)時計の時間をみるのは問題なかった。ところが、ぎりぎりまでケータイを手放せない人は数え切れないほどいた(神秘の儀式を待ちながらMIXIをやるばあいじゃないでしょ?)し、そしてなんといってもぎりぎりまでフラッシュを使って記念写真を撮ったりする、絶対許せない大バカヤローもたくさんいた。もちろん、そのフラッシュが近くに立つ人(僕とか)の眼に入るとせっかく暗さになれた視力がパッになってしまう。えらい迷惑だ。
23時ごろホテルから出て、参道の春日大社のかなり近いところに立って待っていたが、24時になると、神社のほうの光が消えることが分かった。いよいよ始まるんだね。そして、しばらくして神霊を運ぶ行列が通った。宮司や巫女がいる、ひちりきを吹く人がいる、そして神霊が入っている「なにか」を枝で囲む人がいる。見た目も不思議だったが、一番すごかったのは音のほう!神社のホームページには「「ヲー、ヲーの声」と説明されているが、それとひちりきなどの音が混ざって、千年前の響きなのか、宇宙の声なのか、とにかく聞いたことのない、本当に毛が立つほど神秘的な音だった。あれを聞くためだけでもこのお祭りに参加する価値がある。また来年聞きにいきたいなと思う。(ちなみに、撮影は厳禁だが、録音はどうだろう。ちょっとネットで探したが、そんな情報が見つからない。)
行列の最後尾に合流して、お旅所まで。そこに神霊が入ったら、火がついて、いろんな祈りや儀式、そして神楽が行われた。時間はもう夜の1時半を回ったし、気温も零度に近かったが、かなりたくさんの人がいた。でもそのうち寒さに負けて、ホテルの温泉に戻った。
次の日(というか、同じ17日の昼間)にはまずお渡り式というパレードがあった。後の「お旅所際」に参加するパフォーマーなどが平安時代の衣装で通るが、役割不明な道具や「帽子」などが多い。
たとえばこの田楽の団体の「ミニフロート」...
...があとで、なんとかぶり物になってしまう!
Carmen Miranda, you got nothin' on me!
でもそれをかぶっても、別になにかを「やった」気配は全くなくて、高い下駄の上にそこに立っていただけのようだ。もっとも、お旅所での演技はすべて神様のためなので、神様に向かって行われている。それは同時に一般の観客に背を向いているわけだから、なにをやっているのかがよく見えないことが多い。たとえば、この田楽は能のような短いものを演奏したらしいが、こんな距離(15メーター?)からでも全然見れなかったし、なにも聞こえなかった。
お旅所は毎年お祭りのために建てられるが、屋根は神社の大昔の形だそうだ。
午後の神楽。左には巨大な火炎太鼓の片方が聳え立つ。(右にも違う1個がある。)
子供の演奏者の着替えには大人たちが手伝う。暗くなってからは同じ舞の大人版もあったが、大人たちは自分で着替えることができた。
どんどん暗くなって、寒くなった。この日は今年のそこまでの一番の冷え込みで、ひょっとして0度を下回ったかもしれない(猿沢池の表面が凍っていたようにみえた)。上の「細男」(せいのう)を見て、ちょっと休憩をして、温かいコーヒーを飲みに行ってきた。
演奏は順番に何時間も続いていた。これは不思議な琴の引き方。二人が琴の両側を持ちながら、もう一人が引いている。残りの人は歌。
舞楽は衣装がすごい迫力だが、舞そのものはとてもゆっくりしていて、雅楽もかなり単調だ。そのうちあの「仮面に似合う」大胆な動きやステップがあるんじゃないかと期待しながら見ていたが、いくら待ってもそういうような派手な動きは結局でてこない。最後まで非常に遅くて、意味がありそうだが意味がわからない細かい動きやポーズだけだ。それがつまらないというわけではない。むしろ、不思議な魅力があるような気がする。なんといっても魔法なんだから!ただ、厳しい寒さの中に何時間も立って見るのにやっぱり限界がある。別の季節ならもっと見たかったが。
昼間は人が入りきれないほど込んでいたのに、夜になると観客がどんどん減っていって、9時頃は招待席の客産を別として、僕たちのような立ち見の一般の観客は数十人しかいなかった。上の青い衣装の「キトク」というものを途中まで見て、夜10時ごろは僕たちももうギブアップ。あと2つの舞と神霊を返す儀式が残っていたが、手足の感覚はとっくに前からなくなっていて、歯もガタガタし始めていた。お旅所の近くには屋台とかそういうようなものがないから、結局街の中のまだ開いている居酒屋にを必死に探して、熱燗を頼むしかなかった。
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ああ、奈良といえばもちろん鹿。自分の糞の後片付けに手伝う鹿もいるみたい。
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