Thursday, December 31, 2009
今さら、夏の旅行 ・ Very belated summer report
もう半年前の話だが、ちょうどそのときパソコンが壊れてしまったからタイムリーに書けなかった。「いまさら」と思う人もいるだろうけど、寒い今頃こそこんな写真がいいんじゃない?
(この最後の猫だけは、実は剥製。ヴェネツィアのビエンナーレのドイツパビリオンの作品の一部分だ。)
ところが、像そのものは旧市街の少し外のどうでもいい駐車場の中にある。
残念ながら、リトアニアの食べ物はほかの東・北ヨーロッパと同様、基本的にあまりおいしくない。しかし、一つの素晴らしい例外があった!それは DOMM という、ヴィリニュスの一番おしゃれで、そして多分一番高いレストランのこと。ミシュランはまだ旧東ヨーロッパ方面のガイドブックを出していないと思うが、もし出したら、このいわゆる分子ガストロノミーのレストランは絶対一つや二つの星をもらうだろう。特に以下の写真のオードブル(なんと、ウナギの燻製にリンゴのムースにフォアグラ!その表面はキャラメルされていて、上に載っているのはリンゴの泡)は2009年食べた物の中で抜群のぴか一うまかったんだ!あまりにもおいしくて、ウエイターさんに「これをデザートにもお願いしてもいい?」と聞くぐらいだった。(メインや実際に出たデザートもおいしかったが、写真がちょっとボケてしまった。)
しかし、リトアニアは全部そんな楽園じゃない...
そのウズピスにはRagaineという、とても面白いレコード屋さんを見つけた。こんな時代になって、いまだにレコード屋さんに興奮するなんて、と思われるかもしれないが、本当に魅力的なお店だ。
最初に入った時、聴いたことのない種類の音楽が流れていた。それだけでも極めて珍しい。サックスとバグパイプ(!)の変わった組み合わせでの実験的な民族音楽のような、ヤン・ガルバレクっぽいジャズのような音楽。「これを今買わないと、もう二度と見つけないだろう」と思って、早速買ってしまった。
実は、あのお店が扱う音楽はそういう「聴いたことのない種類」の音楽ばかりだった。ほとんどバルト系の音楽の専門店だが、近くの国々の音楽も多少あった。民族音楽もあれば、実験音楽やデス・メタルもあったが、普通のポップスやロックは全くなかった。英語での音楽もわずか数枚しかなくて、それも昔の Recommended Records のようなアヴァンガードのものだった。
カウンターのうらのきれいなお姉さんはいろいろ聞かせてくれたが、結局この4枚を買った。(本当はもっとほしかったかもしれないが、現金があまりなくて、このお店に限ってクレジットカードを扱っていなかったからしょうがない。)
左上なのは例のサックス+バグパイプのやつ。5分を聞けば本当に不思議な音楽だけど、1時間はやっぱりちょっとしつこい。右上はちょっと「リトアニア版の Tuxedomoon」のような感じだが、今ひとつだった。左下は女性ヴォーカルのリトアニアのプログレで、悪くないが、でも右下のFlëurのアルバムは一番の当たりだ。これだけはリトアニアじゃなくて、ウクライナの女性の二人組を中心のバンドだが、実はこの半年の一番好きなアルバムなのだ。
*
洪水 ・ Floods
洪水 ・ Floods
(この最後の猫だけは、実は剥製。ヴェネツィアのビエンナーレのドイツパビリオンの作品の一部分だ。)
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ヴィリニュス ・ Vilnius
その旧市街も悪くなかったが、僕が特に見たかったのは、なぜかヴィリニュスにある、世界唯一のフランク・ザッパ像だ。やっぱり、その狙いの観光客は結構多いみたいで、サインもちゃんと出ている。しかし、なんといってもリトアニアへの旅についてちょっと書きたかったんだ。文書はともかくとして、(自分で思う)いい写真をいろいろ撮ってきたから、それを載せなきゃ。
スウェーデンにいる間に使わなきゃいけないマイレージがあったが、あまりたくさんじゃなかったからそんなに遠くまではいけなかった。そんなわけで、わりと近くて、行ったことがなかったから2泊3日でヴィリニュスへ行ってきた。
ヴィリニュスはプラハやクラコウと同じように、戦争や共産主義の時代にめちゃくちゃになった旧市街を丁寧に修復して、UNESCOの文化遺産のリストに載っていて、今はちょっと穴場的な観光スポットになっている。特に西ヨーロッパやスカンジナヴィアに比べれば、物価は半額以下だ。
スウェーデンにいる間に使わなきゃいけないマイレージがあったが、あまりたくさんじゃなかったからそんなに遠くまではいけなかった。そんなわけで、わりと近くて、行ったことがなかったから2泊3日でヴィリニュスへ行ってきた。
ヴィリニュスはプラハやクラコウと同じように、戦争や共産主義の時代にめちゃくちゃになった旧市街を丁寧に修復して、UNESCOの文化遺産のリストに載っていて、今はちょっと穴場的な観光スポットになっている。特に西ヨーロッパやスカンジナヴィアに比べれば、物価は半額以下だ。
ところが、像そのものは旧市街の少し外のどうでもいい駐車場の中にある。
残念ながら、リトアニアの食べ物はほかの東・北ヨーロッパと同様、基本的にあまりおいしくない。しかし、一つの素晴らしい例外があった!それは DOMM という、ヴィリニュスの一番おしゃれで、そして多分一番高いレストランのこと。ミシュランはまだ旧東ヨーロッパ方面のガイドブックを出していないと思うが、もし出したら、このいわゆる分子ガストロノミーのレストランは絶対一つや二つの星をもらうだろう。特に以下の写真のオードブル(なんと、ウナギの燻製にリンゴのムースにフォアグラ!その表面はキャラメルされていて、上に載っているのはリンゴの泡)は2009年食べた物の中で抜群のぴか一うまかったんだ!あまりにもおいしくて、ウエイターさんに「これをデザートにもお願いしてもいい?」と聞くぐらいだった。(メインや実際に出たデザートもおいしかったが、写真がちょっとボケてしまった。)
Absolutely fabulous appetizer at restaurant DOMM in Vilnius:
Smoked eel, apple mousse and foie-gras
- the most delicious dish I tasted in 2009!
Smoked eel, apple mousse and foie-gras
- the most delicious dish I tasted in 2009!
ヴィリニュスの看板 ・ Vilnius signs
トラカイ ・ Trakai
トラカイはヴィリニュスから電車で30分ぐらい離れた、古いお城のある町。ヴィリニュス駅から出発して、10分もしないうちにすでにド田舎だった。湖も多くて、ちょっとタイムスリップしたバカンスの雰囲気だった。しかし、リトアニアは全部そんな楽園じゃない...
Užupis
ウズピスはヴィリニュスの中心に近いところにある、アーティストが大勢住むらしい地区で、「独立した共和国」にもなっている。そのウズピスにはRagaineという、とても面白いレコード屋さんを見つけた。こんな時代になって、いまだにレコード屋さんに興奮するなんて、と思われるかもしれないが、本当に魅力的なお店だ。
最初に入った時、聴いたことのない種類の音楽が流れていた。それだけでも極めて珍しい。サックスとバグパイプ(!)の変わった組み合わせでの実験的な民族音楽のような、ヤン・ガルバレクっぽいジャズのような音楽。「これを今買わないと、もう二度と見つけないだろう」と思って、早速買ってしまった。
実は、あのお店が扱う音楽はそういう「聴いたことのない種類」の音楽ばかりだった。ほとんどバルト系の音楽の専門店だが、近くの国々の音楽も多少あった。民族音楽もあれば、実験音楽やデス・メタルもあったが、普通のポップスやロックは全くなかった。英語での音楽もわずか数枚しかなくて、それも昔の Recommended Records のようなアヴァンガードのものだった。
カウンターのうらのきれいなお姉さんはいろいろ聞かせてくれたが、結局この4枚を買った。(本当はもっとほしかったかもしれないが、現金があまりなくて、このお店に限ってクレジットカードを扱っていなかったからしょうがない。)
左上なのは例のサックス+バグパイプのやつ。5分を聞けば本当に不思議な音楽だけど、1時間はやっぱりちょっとしつこい。右上はちょっと「リトアニア版の Tuxedomoon」のような感じだが、今ひとつだった。左下は女性ヴォーカルのリトアニアのプログレで、悪くないが、でも右下のFlëurのアルバムは一番の当たりだ。これだけはリトアニアじゃなくて、ウクライナの女性の二人組を中心のバンドだが、実はこの半年の一番好きなアルバムなのだ。
Wednesday, December 30, 2009
(どうでもよかった)2009年のアート
今年のアートはあまり面白くなかった。不況のせいか、時代のせいか、それとも見すぎた自分のせいか、とにかく興奮するものは少なかった。僕は基本的に現代美術が好きだが、「現代美実」というのは「今」についてのアートで、社会・政治に対するメッセージやコメントや批評やヒューモアや挑発があって当然だと思うが、最近はそういうようなアートをほとんどなくなってしまったような気がする。代わりにあるのは深い意味がなくて、ただ「まあまあきれい」なものや「かわいい」もの、よくできた工芸品のようなものなどばかりだ。別にそういうものが嫌いなわけじゃ全然ないけど、なにかが物足りないのだ。本当にびっくりして「すごい!」と思うものがやっぱり少なくなってきた。特に9月以降は、工事がうるさくて家にいられない日が多くて、無理矢理に数え切れないほどたくさんのギャラリーを回ったりしたが、どうも「これだ!」というものには出会わなかった。いいと思った大型展覧会もいわゆる現代美術よりもデザインの Verner Panton展や今、森美術館でやっている現代美術よりも、むしろ科学史の味が強い「医学と美術展」とか。
でもそんなことを言いながら、今年の一番の気に入りの作品はまさに「非常によく出来た、かわいい工芸品」のようなこの蛾だ。4月のArt Fair Tokyo の MA2 Gallery のブースにあった樋口明宏さんの作品で、本物の蛾の翅に描かれているんだよ!
これも最高!本当に「アート」や「インスタレーション」のつもりだったかどうかわからないが、もしなくても、僕がここでアートとして紹介することによって立派なパブリックアートになった。
2月の樋口佳絵展もよかったし...
... 4月の Art Fair と同時開催の 101 の eitoeiko のところの相川勝のこの「レコード屋さん」も大笑いするほどばかげていて面白かった。よく見ると、「本物」のCDじゃなくて、全部がアーティストの手書きのコピーで、しかも中には音痴のそのアーティストが自ら歌っているそれぞれのCDのカバーヴァージョンが入っている。
6月はTokyo Wonder Site の青山レジデンスのオープンデーでみたカンボジアの若手の2人の作品:
スウェーデンのお城の公園の池に沈も家のインスタレーション
Exotic Creatures of the Deep
は Sparks の一番新しいアルバムで、その Sparks は4月のライブも見に行ったが、4月にはほかの変な生き物も上陸してきた。
まず、のちかなりの話題になった横浜に来たLa Machine の巨大蜘蛛。蜘蛛そのものも迫力満点だったが、最初に現れた時のパフォーマンスの生演奏の音楽がとてもよかった。
Theo Jansen の「生き物たち」も印象的だった。電気を一切使わずに、空力だけで動いている。
そして同じ日に見た、Tomio Koyama Gallery での Gelitin というオーストリアの団体のオープニングは今年のハイライトのひとつだった。
あとはVeneziaの話だね。
今年もヴェネツィアのビエンナーレへ行ってきたが、いまいちだった。別に「ひどい」というわけじゃないけど、なまぬるけて、「まあまあいい作品」や「どうでもいい作品」ばかりで、印象に残る作品が少なかった。
そしてまたも、ビデオの作品のほうが一番良かった。(僕はビデオアートがあまり好きじゃないといつも言っているくせに。)
ウルグアイのパビリオンの Pablo Uribe のシュールな動物の鳴き声のビデオとか...
Natalie Djurberg のインスタレーションとビデオとか...
この影の作品とか...
去年の横浜トリエンナーレにも参加していた Ulla Brandenburg の不思議な歌のビデオとか...
そしてとくに、Bestué / Vives という組のダダ派のビデオ。30分ずっと笑いっぱなしだった。
国のパビリオンのなかではサウジ・アラビアのほうがちょっと気に行っていた。サウジでアートを作るのが難しそうだからよく頑張ったな、ということもあったし、入口でナツメヤシのお菓子を配っていたこともあるね。
でもビエンナーレそのものよりも関連イベントのほうがずっとおもしろかった。とくに Palazzo Fortuny で行われた Infinitum という展覧会は一番良かったが、建物の中は薄暗くて、残念ながら写真向きじゃなかった。
東京にもある Berengo Collection がキューレーションした、ガラス関係の展覧会の Glass Stress もとてもよかった。
食器はレーザーで「テーブル」から切られている。
そしてアルセナーレの向こう、ボートで行くところにあった Unconditional Love も面白かった。
その間中には360度のビデオの作品の丸い部屋があった。CMのような、ポスト植民地主義理論のような映像だったが、スケールが大きくて、印象的だった。
まあ、そんな感じだった。なにかを忘れているだろうが、しょうがない。
でもそんなことを言いながら、今年の一番の気に入りの作品はまさに「非常によく出来た、かわいい工芸品」のようなこの蛾だ。4月のArt Fair Tokyo の MA2 Gallery のブースにあった樋口明宏さんの作品で、本物の蛾の翅に描かれているんだよ!
これも最高!本当に「アート」や「インスタレーション」のつもりだったかどうかわからないが、もしなくても、僕がここでアートとして紹介することによって立派なパブリックアートになった。
2月の樋口佳絵展もよかったし...
... 4月の Art Fair と同時開催の 101 の eitoeiko のところの相川勝のこの「レコード屋さん」も大笑いするほどばかげていて面白かった。よく見ると、「本物」のCDじゃなくて、全部がアーティストの手書きのコピーで、しかも中には音痴のそのアーティストが自ら歌っているそれぞれのCDのカバーヴァージョンが入っている。
6月はTokyo Wonder Site の青山レジデンスのオープンデーでみたカンボジアの若手の2人の作品:
スウェーデンのお城の公園の池に沈も家のインスタレーション
Nosebleed at the French Embassy
Exotic Creatures of the Deep
は Sparks の一番新しいアルバムで、その Sparks は4月のライブも見に行ったが、4月にはほかの変な生き物も上陸してきた。
まず、のちかなりの話題になった横浜に来たLa Machine の巨大蜘蛛。蜘蛛そのものも迫力満点だったが、最初に現れた時のパフォーマンスの生演奏の音楽がとてもよかった。
Theo Jansen の「生き物たち」も印象的だった。電気を一切使わずに、空力だけで動いている。
そして同じ日に見た、Tomio Koyama Gallery での Gelitin というオーストリアの団体のオープニングは今年のハイライトのひとつだった。
あとはVeneziaの話だね。
今年もヴェネツィアのビエンナーレへ行ってきたが、いまいちだった。別に「ひどい」というわけじゃないけど、なまぬるけて、「まあまあいい作品」や「どうでもいい作品」ばかりで、印象に残る作品が少なかった。
そしてまたも、ビデオの作品のほうが一番良かった。(僕はビデオアートがあまり好きじゃないといつも言っているくせに。)
ウルグアイのパビリオンの Pablo Uribe のシュールな動物の鳴き声のビデオとか...
Natalie Djurberg のインスタレーションとビデオとか...
この影の作品とか...
去年の横浜トリエンナーレにも参加していた Ulla Brandenburg の不思議な歌のビデオとか...
そしてとくに、Bestué / Vives という組のダダ派のビデオ。30分ずっと笑いっぱなしだった。
国のパビリオンのなかではサウジ・アラビアのほうがちょっと気に行っていた。サウジでアートを作るのが難しそうだからよく頑張ったな、ということもあったし、入口でナツメヤシのお菓子を配っていたこともあるね。
でもビエンナーレそのものよりも関連イベントのほうがずっとおもしろかった。とくに Palazzo Fortuny で行われた Infinitum という展覧会は一番良かったが、建物の中は薄暗くて、残念ながら写真向きじゃなかった。
東京にもある Berengo Collection がキューレーションした、ガラス関係の展覧会の Glass Stress もとてもよかった。
食器はレーザーで「テーブル」から切られている。
そしてアルセナーレの向こう、ボートで行くところにあった Unconditional Love も面白かった。
その間中には360度のビデオの作品の丸い部屋があった。CMのような、ポスト植民地主義理論のような映像だったが、スケールが大きくて、印象的だった。
まあ、そんな感じだった。なにかを忘れているだろうが、しょうがない。
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