Wednesday, December 31, 2008

2008年の気に入ったが、なぜか書かなかったアート

2008年もアートをたくさん見た。東京のギャラリーの大移動もあったし、トリエンナーレを始めとするアートフェアもいくつもあったし、ニューヨークやパリーやロンドンへも行ったが、結果としてアートをちょっと見すぎたような気もする。見すぎると飽きるんじゃなくて、鈍くなって、感動しなくなってしまうのだが、ちょっともったいないよね。
でも気に入ったアートに関しても、せっかく写真を撮ったりしたのにいろんな理由でタイムリーにブログに書かなかったのはもっともったいないから、今になって書こうかなと思っている。(今さら、と思う人もいるかもしれないが。)

有名なアーティストの名作もいいけど、個人的に一番楽しいのは面白い若手のアーティストを「発見」することだと思う。(もちろん、僕の前にどこかのギャラリーの鋭い目のスタッフの誰かが先に見つけないと僕も「発見」できないが。)今年もそういう発見があったよ。たとえば、このあいだちょっと書いたサガキケイタさんはまさにそういう人。
4月の始めころに東京にはいくつかのアートフェアーが同時に開催されて、その中には一番元気だったのは秋葉原の廃校で行われた101 Tokyo Contemporary Art Fair。ちょうど風邪を引きかかるところもあったか、メイン会場にはそんなに感心しなかったが、2階のある部屋には不思議なピンクの人形とその宇宙人っぽいキャラクターが主人公になっているアニメのビデオがあった。
The normally nasty Tetragrammaton, rendered cute
それを作った若い女性のアーティストの森木沙織さんに聞いたら、「神様だ」って!しかも日本の神々の仲間のちょっとヘンテコなやつじゃなくて、あのキリスト教の嫉妬深くて、わがままでいやな神様だ。(ビデオをよく見たら、あのピンクの神様が地球や人間を作るが、その「人間」というものは駄作だとわかって、ゼロに戻して、地球を作り直して、こんどは自分そっくりのピンクの生き物を居住させる、という話だった。)なかなかの発想で、アートフェアの中では一番面白かった!
Mother of God, Moriki Saori

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ちょうどあの時期(3月、4月)はアートのイベントがいっぱいあったが、仕事も忙しくて、途中でとんでもない風邪を引いて、数週間もダウンしてしまったからリポートを書くのがずっと後回しになってしまった―今まで。
その時期には Sarah Sze の Maison Hermes でのインスタレーションもあった。実は、僕が Maison Hermes の展覧会がほとんどいつも好きだ。普通のキャラリーや美術館のいわゆる「ホワイト・キューブ」の白い壁と違って、ガラスだから、アーティストにとってはかなりのチャレンジにはなると思うが、それをうまく利用するとほかのところとは全然違う味のインスタレーションが可能になるのだ。以前はたとえばSuh Do-Hoの展覧会をそこで見て、一気に大ファンになったことがあるが、同じ作品を1月ニューヨークの普通の空間でまた見たが、インパクトは半分しかなかった。(Suh Do-Ho といえば、6月のロンドンで見た唯一の面白い現代美術の展覧会は Hayward Gallery でのPsycho Buildings だった。そこにも彼のすばらしい作品が2点あったけど、残念ながら写真を撮ってはいけなかった。また、東京都現代美術館(MoT)にも彼のすごい作品がパーマネントコレクションの入り口にあったが、このあいだ行ったら、なんと撤去されてしまった!しかも、どうでもいいガラクタを置くために!なにを考えているのだろう、そこは。)
そんなHermes の空間には Sarah Sze さんこそが「ガラクタ」のようなもので2階分の高さの巨大なインスタレーションを作った。この写真ではわからないかもしれないが、実際に細かくて、楽譜のようにいろんなものがアレンジされた。長い時間見ても飽きなかくて、不思議だった。
Huge installation by Sarah Sze at Maison Hermes
特に下の水道のパイプ?電源?につながっているこのティーバッグが気に入った!
Electric teabag

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3月はOmbak という、相当変わったイベントへも行った。(いつもすごい)山川冬樹のホーミーにガメラン、そしてKYOTAROのライブ・ペインティング。地球にはこんなものもあったのか。Wow!

Fuyuki Yamakawa (khoomei), Terang Bulan (gamelan), Kyotaro (live painting)

そのOMBAKへ行く途中にたまたま寄ったギャラリーには須川まきこさんのオープニングが行われていたが、それも相当変わっていた。

Opening party for exhibition of drawings by Makiko Sugawa (in the yellow dress)

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夏は21_21 DESIGN SIGHT には「祈りの痕跡」という展覧会があった。まとまりがちょっと中途半端で、全体的な印象はいまひとつだったが、杉浦康平先生による、文字の魔法の力についてのこの垂れ幕のようなものの英訳は僕だった...
(なぜかカタログの代わりの薄いパンフレットみたいな本には載っていないが。一番面白かったのに。)

Banners by Kouhei Sugiura about the magical powers of letters and characters,
with English translations by me

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2007年の「発見」の一人、木村幸恵さんの作品を見に遠い所沢(片道2時間半)や鶴見へ行ってきた。やっぱりいいよ!
Ghost installation by Kimura Sachie

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11月にオオタファインアーツには「アニマル・ガーデン」という不思議な展覧会があった。動物をテーマにして、草間彌生、小沢剛などギャラリーを代表する現代のアーティストの作品と江戸時代の(若冲ふうの)絵や中国の骨董品を合わせた展覧会で、それだけでもかなり面白かったが、「決め手」はギャラリーの間中に置かれたソファやカーペットや植物の「オアシス」っぽい演出。お茶、じゃなくて、なんとなくチャイが飲みたくなるところだった。そんな工夫をほかのギャラリーでもしてもいいよね。ちなみに、今(まだ)開催中の展覧会の「演出」もかなり凝っていて、面白い。

このちょっと豚の鼻のような犬(古代中国の陶器のもの)を見たら...
... 夏、ロンドンのV&Aで見た、やはり古代中国の陶器の虎を思い出す。
犬のほうの役割は不明だが、その虎はなんと小便器だそうだ。古代の人の発想はやっぱりすごすぎる。よくモノを(陶器とはいえ)虎の口に入れる勇気があったな。

そして昔の人のとんでもない発想といえば、パリにはルーヴル美術館へ行った。ミーハーはみなモナリザがある部屋に集まった(本当に恐ろしい混雑振りでもちろんなにも見れない)が、ほかのレオナルドの絵はだれも見ようとしなかったし、フェルメールの絵だって僕が数分間独占することまでできた。(間接的なフェルメール展さえ80万人も見に行く東京ではとても考えられないことだ。)そんなルーヴルの片隅にはこんな絵も見つけた。

Rocket monk rescues hattifatteners

ちょっと漫画ちっくにも見えるが、実は無名(?)のアーティストによる600年前の宗教画だ。誰かの聖人が刑務所の収容者を解放させる場面だと思うけど、聖人が飛んでいることはまだいいが、その半分はがされたステッカーのような、ロケットっぽい下半身はいったいどういうふうになっているの?また、開放された収容者たちはニョロニョロみたいに丸いネズミの穴から脱出するが、どうして右側にあるドアから出ないのだろう?あの階段はもしかして古代のトマソン?昔こそ本当の外国だね。

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