うああ... 1ヶ月もアップしていなかったのかぁ。別に忙しかったり、病気したりしたわけじゃなくて、ただ最近は妙にとろいだけだ。しょうがないね。
それはともかくとして、今週は伝統行事の東京国際映画祭だ。毎年行っているから今年も今のところ3本見てきた。ただ、今回は20回目だが、世界の映画祭の中では東京国際映画祭はとてもランクが低いことは残念ながら最初から変わりがない。特にコンペティションのほうはあまり期待できない。受賞してもあとで話題になった作品はほとんどないし、グランプリを受賞した映画の中でもあとで普通の映画館に公開されるどころか、ビデオにさえ出たことがない作品もいくつもある。といっても、無名の若手の監督の掘り出し物もあるし、コンペティション以外に上映されるアジアの映画にはかならずマイナーだが、すごくいい映画がいっぱいあるから、僕はだいたいそのへんを狙う。
まず、日曜日見たのは、あの問題のあるコンペティションに登場したフランスの若手監督の Jérôme Bonnell の新作、「誰かを待ちながら」 (J'attends quelqu'un)。とても僕の趣味の映画だった!ストーリーといったストーリーは特になくて、「アクション」や大げさなドラマもまったくなくて、ハリウッド映画の正反対の種類の映画なので、わからない人はさっぱりわからないだろう(そういったわからない人によるこの映画の批評をネットでいくつか読んだ)が、ボネル監督は「エリック・ロメールっぽい」といったら、そんな趣味の人がすぐ納得すると思う。大きな展開がなくても出てくるのはフランスの小さい町の何人かの偶然の出会いやお別れ、日常の中のちょっと不思議な出来事、人生を考えさせる場面のいろいろ。カフェを経営するおじさんとその「レンタル恋人」の切ない関係(「客と娼婦」といったら、なんかレベルが下がりすぎる)、学校の先生をやっている女性とそのだんなさんが偶然に拾ってしまったクマのような大きくて黒い犬の話、そして町に久しぶりに戻った、秘密のある無口の若者の話... とても静かな映画だから賞は取らないかもしれない(特に去年のグランプリは(まったくのクズの)フランス映画だったこともあるから今年はフランスの番じゃないだろう)が、今年で30歳の若さでの監督の人生の洞察力に感心した。
昨日は「アジアの風」のシリーズの映画を2本見た。そのシリーズはいつも僕にとっての映画祭の目玉になっている。香港や韓国の映画はだいたいあとでDVDなどでも見れるが、それ以外の東南アジアの(映画的に言えば)もっと「マイナー」な国の作品をここで見逃せば、後で見るチャンスはも二度とないことが多い。少なくとも読める言語の字幕では。(実際に、去年、おととしとさらに前から見ようと思ったけど結局見なかったが、その後ずっと探している作品は何本もある。やっぱりマイナーすぎる。)
というわけで、最初に見たのは「遠い道のり」という台湾映画(英語名は "The Most Distant Course")。これもアクション物からほど遠い静かな映画で、ちょっとだらだらしているところもあったが、まあまあよかった。映像が綺麗だし、「音」のアイディアも面白いし。30代の気がおかしくなった精神分析の医者、映画の仕事からクビになって、台湾の自然の音を記録しようとしている若いサウンドマン、そして彼が録音したテープを間違って受けとってしまって彼を探しに行く若いOLの3人がそれぞれの失恋(と責任)から逃げて、自分探しの旅に出る、といったストーリーだが、果てのないロードムーヴィーのような感じだ。しかしねぇ... ソウンドマンの「フォルモサの音」(海の音、森の音、リスのラブコール、現民の歌、などなど)の企画はとても面白くて、本人は泣きながら分かれた恋人に(無駄に)テープを送り続けても、希望があるような気がするが、ほかの二人はどうだろう。ヘンテコの医者のほうは精神分析から精神分裂病に変わってしまったようで、たぶんもうおしまいだろう。そもそも彼の映画の役割は英語でいう comic relief (それ以外はどちらかというと暗い映画には笑いを誘う場面を作るキャラクター)だから、最終的にはどうでもいいかもしれないが、僕にとって問題なのは女の子のほうだった。数年前の「藍色夏恋」という日本でも流行っていた台湾映画で好奇心あふれる女子高生を演じた女優のグイ・ルンメイさんはとてもかわいいけど、この映画では(僕の苦手の)最近の日本の映画に登場する若者みたいに、ほとんど無表情で、無口で、結局「中身」もあまりなさそうだ。空っぽの人間が自分探しの旅に出ても、何かを見つけることがあるのだろうか。しょうがないような気もする。
もう一つの気になったことは、人が泣くシーンがやたらと多い!しかも、それぞれの泣くシーンは非常に長い。数分間も泣くためにしか登場しない女性さえいるほど。監督はそこまで人を泣かせる趣味があるのかな。
台湾の映画のあとは、本当は気に入りの香港監督の Pang Ho-Cheung の新作を見たかったが、完売だったので代わりによりマイナーなマレーシア映画の「ダンシング・ベル」にした。天気もよかったからちょっと迷っていたけど、これぞここで見ないともう二度と見れないような映画だから見ることにした。それが正解だったと思う。やっぱり低予算(ビデオ撮影)で作られた映画で、普通の映画館で公開されることはまずないと思う。それなりに楽しくて、ほのぼのした映画だったのにね。ストーリーはマレーシアのクアラルンプールの郊外に住むタミル系の貧乏な家族の話だが、たぶん東南アジアやアフリカなどのほとんどどこでも通用するんじゃないかと思う。11歳の娘は民族舞踊のダンサーにあこがれいて、お兄さんはオートバイを買いたいがお金がない。そして暴力的なだんなを追い出した花売りのお母さんはがんばって、なんとか生活費を作ったりする。これもやっぱりとても静かな映画で、アクション的な展開が可能な場面(というか、普通の映画なら絶対にアクション的に展開する場面)もあるが、監督はそんな展開をあえて避ける。たとえば、お兄さんはちょっぴり不良の仲間と一緒に人の車を「かりる」が、クラッシュしてしまう。でもクラッシュそのものが映らない!その賠償のために引ったくりもするが、やっぱりチンピラになりたくないからその展開も始まらないうちに終わってしまう。でもそれでいいんじゃにですか。とにかく、いくら貧しくても、この映画に出てくる人々はみな上記の台湾の映画(やそれに似たような最近の日本の映画)の甘やかされた都会の若者よりも生命力がある。
別のことだが、先日、映画祭が行われる六本木のシネコンへ行ってきた友達からのメールが届いて、「映画が終わってロビーに出るとポップコーンの臭いが気になる」って。本当だよ!しかも、僕が昨日見た映画の両方にもたまたま出口の近くに座っていたから、上映中もポップコーンくさかった。一度考えてしまえば、ポップコーン(あるいはポップコーンにかける、人工的でものすごく甘いなにか)の匂いがずっと気になっていた。関係者よ、子供向きのハリウッドものじゃなくて、大人のためのアジア映画だぞ!(もちろんだからといって台湾の映画の上映中に臭い豆腐の匂いのほうがいい、とかそんなわけじゃないよ。)
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