この世紀に入ってから、僕の一番の気に入るの音楽はHuong Thanh(フン・タン)のアルバムだ。2001年、初めてDragonflyというアルバム(特に2曲目の "Bakida" のヴェトナムの民族楽器のダンバウの音)を聞いてから完全にはまっている。何回聴いても飽きない。実際に100回以上聴いても飽きない。そんなのは人生の中でも、持っている数千枚のアルバムの中でも数枚しかない。
フン・タンは一応ヴェトナム民族音楽のトップレベルの歌手だが、これは普通の意味での「民族音楽」じゃない。ジャズのラベルからでているが、普通の意味での「ジャズ」でもない。似たようなものがこの世の中にまったくないみたい。(あればほしいから、ずっと探しているんだけど。)
実は、「フン・タンのアルバム」といっても、この音楽を考え出したのは作曲・編曲の凄腕のジャズ・ギタリストのNguyên Lê(ヌイェン・レー)。彼は「ヴェトナム人」といっても、ヴェトナム人の親を持つパリ生まれのフランス人で、長年いろんなヨーロッパのジャズのミュージシャンやアフリカのミュージシャンと一緒にやってきたが、95年当たり自分のいわゆる「ルーツ」を探すためにヴェトナム民族音楽を基にしたジャズのプロジェクトを始めて、そのためにやっぱりずっと(ヴェトナム戦争以来?)パリに住んでいるフン・タンを見つけたそうだ。最初のコラボレーションは彼の名前で発表された Tales from Viêt-Nam というアルバムだが、そのあとの4枚はフン・タンの名前ででている。ほかのメンバーはジャズの人、アフリカ系やアラブ系の人、そして最新のアルバムには琴を弾く日本人の女性まで、といったパリならではのミックス。とにかくすばらしい。
(ヌイェン・レーのほかのアルバムもなかなかいいが、それは別のときの話。)
しかし、日本にはなかなか来ない(どうも、なぜかだれも誘わない)から、11月16日香港にライブがあることを聞いたときは最初はちょっと迷っていたが「まあ、最近香港へ行っていないから香港でもいいか!」と決心して、コンサートの4日前に緊急にフライトとホテルの予約して、香港のチケットの売り場に電話してコンサートの席も予約して見に行ってきたんだ!そしてやっぱり最高だった!
ライブは最新アルバムとだいたい同じ7人のメンバーで、(在パリの)フランス人、ヴェトナム人、カナダ人そして日本人の国際的な組み合わせ。コンサートの途中で写真は取れなかったが、終わった後、なんとアーティストとのQ&Aもあった。映画祭などにはよくあることだが、コンサートでは珍しい、というか今までそんな経験がないと思う。アートフェスティヴァルの中のイベントだったからかもしれないがよくわからないが、とにかくQ&Aも終わった後、直接ヌイェン・レーとフン・タンに直接話することもできたし、プログラムもサインしてもらった。(ああ、こんな歳で「アイドル」の前で興奮するなんてね。)